コンピュータが人間を超えるとき

コンピュータが人間を超えるとき

2015.11.11

人工知能という言葉を最近よくまた目にすることが多くなりました。人工知能の過去やこの先、私たちの生活にどのような変化をもたらすか、どんな影響を与えるかを考えてみました。

人工知能のこれまで

『人工知能 作家になりたい』

これは、ある新聞社の夕刊一面に書かれていた見出しです。そこには人工知能『AI』で文学賞を目指す研究が行われている事例を紹介していました。

有名なSF作家の作品を単語、文章構成、人物表現に分けて分析し、まるで本人が書いたような新作を作る。文章構成を処理する部分にAI(自然言語処理)を用いた研究が行われていたが、意味のある長文を作成することができなかったので、文章構成は人間が考え、文章作成はAIが担当すると言った『人』と『AI』との『共同作品』を考えているとのこと。

そこで、『AI』について少し過去を振り返ってみます。

私が初めて人工知能(AI)とういう言葉を聞いたのは、1980年台の半ばだと記憶しています。その当時、通産省が掲げた『第五世代コンピュータ』という国家プロジェクトがあり、「人工知能が人間の知能を越えること」を目標としていました。また『第五世代コンピュータ 日本の挑戦』というタイトルの本があり、私も買って読んだ記憶があります。様々な分野でのエキスパートシステムをつくり、その中に人間が持っている専門知識を入れてコンピュータを動かす。と言う様なことが書かれており、『エキスパートシステム』という言葉がとても印象に残った事を覚えています。

そして時代とともに『エキスパートシステム』を動かすためのプログラム言語やOSなどが開発され、当時は Prolog や LISP を使ってシステム開発がされていました。また Prolog といえば日本人が開発した有名なもので、京都大学の学生が開発した MS-DOS 上で動く『Prorog-KABA』 というものがありました。その他、コンピュータと対局する将棋やチェスなどのゲームソフトも数多く販売されていました。

しかしいつの間にか『AIブーム』は消えて、誰も騒がなくなりました。しかし最近このコラムを書くことになって、Wikipediaの『第五世代コンピュータ』の記載を読んだところ、

” 570億円を費やし1992年に終結。『アプリケーションがほとんどない 並列推論システム』が完成しただけで産業に影響を与えなかった ”

と書かれていました。その理由について別の文章では、

” コンピュータに人間がもつ知識をインプットする際、その知識をプログラムで正しく表現(記述)できなかった”

とありました。そこから知識を正しく記述するための研究(オントロジー)が新たに始まったのです。

最近の人工知能は?

近年『AIブーム』がまたやってきています。冒頭の人工知能作家の記事もそうですが、将棋界ではプロの棋士を負かしたり、東京大学の入試に合格するロボットの研究であったり、また海外ではIBM社が開発した『ワトソン』(オントロジー研究の成果とのこと)がアメリカで有名なクイズ番組で人間のチャンピンを破ったりと、人間の能力を超えた『AI』が次々と登場してきています。

身近なところでは、弊社日本サード・パーティ(JTP)でも販売をしているヒューマノイドロボット『NAO』の中には人の感情を読み取ることができる『感情エンジン』という人工知能が搭載されており、人の表情を読み取り、適切な言葉を発することができます。また皆さんもよくご存じの iPhone に搭載されている『Siri』も有名な人工知能の一例です。

この様に『AI』は1980年代ではアプリケーションとして生まれなかった技術ですが、いま私たちの生活の中でその技術が形あるものとしてその恩恵を受けることが多くなってきています。

また、インターネットの普及とWebを利用する際の検索エンジンの誕生により研究が発展した『機械学習』(統計自然言語処理)や、ビッグデータ時代の到来により進化した『ディープラーニング』(特徴表現学習の一種類であり多階層のニュートラルネットワークを用いて学習する方法)へと変化を遂げています。

この先、人工知能が社会生活にもたらす変化は?

コンピュータに人間が持っている様々な知識または、環境の変化をインプットし学習させる、その知識を使って事象の変化を予測し対策を考える、または問題を解決させる、そんな未来はもうそんなに遠くはなさそうです。

産業的な変化

人工知能を応用できる領域は様々ですが、人工知能によって引き起こされる社会的な変化、産業的な変化について少し考えてみました。おそらく、人工知能の活用によって、次のようなことが期待できるでしょう。

  • 健康・医療
    CTやレントゲン等の画像データをもとにした自動診断システム
    また、そのシステムと連動した遠隔地での手術システムや自宅療養システム
  • 防犯・セキュリティー
    指名手配された人物の特徴を理解し複数の防犯カメラからのデータを瞬時に判断する。
  • 農業
    稲作システム(水温・累積温度・害虫駆除)およびそれと連動した自律型農機具

逆に人工知能の応用で変化を与えてはならない領域としては、当然ながら軍事面への応用です。しかし、すでに無人操縦機が存在しており、人工知能 VS 人工知能といった代理戦争が起りかねない状況です。

20年後に残る職業・なくなる職業

また、今まで人が行っていた仕事が人工知能に置き換わることで、20年後に残る職業・なくなる職業という記事が雑誌で紹介されていました。その記事では、

残る職業
1位 レクレーション療法士

なくなる職業
1位 テレマーケター

4位 コンピュータを使ったデータの収集・加工・分析業務

となっています。残るとされている職業は、やはり対人コミュニケーションが必要な職業が多く、医師、歯科医、メンタルヘルス等の機械化が難しいものです。

では、冒頭であった『人工小説家』はどうでしょうか? 小説を読む時その作家の人物像やこれまでの生い立ちなどを想像し、あらすじや登場人物や時代背景を考えながら読むことが多いと思いますが、この場合、人工知能のアルゴリズム名(プログラム名)を見てその作られた背景を味わうことになるのか?と言うとそんな訳にはならず、やはり感動する文書構造は作者の人間身(感性)を感じるからであり、同じ文字が並んでいたとしても味わいが違うはずです。

近くに”理系的発想力を問う文学賞”『星新一賞』が発表されます。こちらのお題は学生部門「30年後の未来を想像して物語を書いてください」、ジュニア部門「100年後の未来を想像して物語を書いてください」とのこと。30年後、100年後には『人』と『AI』の共著作品が公開されたりするのでしょうか。その第一号をぜひ味わってみたいものです。

『星新一賞』:http://hoshiaward.nikkei.co.jp/

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