ERPの活用術~ERPと消費者編~

ERPの活用術~ERPと消費者編~

ERPが私たちの生活とどのように関わり活用されているのか、ご紹介します。意外と知らない、生活を裏で支えるシステム、ERPを紐解いてみましょう。

ERPは誰のためのもの?

ERPというのは、一般的なIT系試験でも言葉が出てくるぐらい、IT業界では知られた仕組みです。そもそも、ERPというシステムはいったいどのようなものなのか、おさらいしておきましょう。

ERPとは?

ERPとは、Enterprise Resource Planning(エンタープライズリソースプランニング/企業資源計画)の頭文字をとった言葉です。

企業にはさまざまな「リソース(資源)」と呼べるものがあります。それは、企業にかかわる人、お金、製造や販売に関わる物のことです。どのような仕事に、どのぐらいのお金がかかり、人が関わっているのかというデータを収集、蓄積し、適切に把握することを目的としたシステム、これがERPです。

収集したデータの使い道

企業は何故、それら「リソース(資源)」を把握したいのかというと、企業はより効率的な仕事をしたいからです。無駄があれば削減したい、投資をしてその費用を回収したい、同じ品質でもっと安価に提供したい、もっと作業効率を高めたい、と思うのはどこの企業の経営者でも同じことです。そうして効率を高めることで、よりたくさんの利益を生み出したいわけです。そうして最終的に出てきた利益は、もちろん巡り巡って新しい商品やサービスという形で私たち消費者に還元されることでしょう。

前置きが長くなりましたが、今回はERPが持つさまざまな側面の中から、「消費者である私たちとERPの接点について」ということで掲載します。

データはどこからやってくる

「ERPは企業がより効率的に仕事をするために導入するシステムである」

というのは、以前のコラムや、前述にもあるとおりです。しかし、消費者である私たちや、企業内でERPに直接関わっていない人たちにとっては全く目に見えないシステムでもあります。では、ERPというシステムがどのような場所で使われ、私たちとどのように関わっているのかをいくつかの例で見てみましょう。

1. スーパーマーケットやコンビニエンスストアの「レジスター」
皆さんよくご存知のコンビニやスーパーのレジ。あれはまさしくERPに必要なものです。無駄を省き、効率的な運用をするために必要な情報をレジは収集してくれています。

例えば、「何時、何を、どんな人が買ったのか。」「よく購入される品の組み合わせは何か。」「どの季節に何が売れるのか。」「男性、女性、どちらが多いのか。」など、レジはお金の計算だけではなく、このような情報を後ろにいるERPシステムに転送し記憶してくれているのです。

2. ポイントカードやクレジットカード
最近、色々なお店でポイントカードが発行されていますよね。あれもERPととても相性のよい仕組みです。上記の例で「レジスター」を挙げましたが、レジで打ち込む「男性/女性」「年齢」は大体見た目で入力されることが多く、確かではありません。よもや適当に近いボタンを押す店員までいます。これでは正しいデータを収集することができません。

そこで便利なのが、ポイントカードなどの登録情報を組み合わせることです。ポイントカードやクレジットカードには、申込時の本人の登録情報が記録されます。場合によっては、名前や年齢、性別だけではなく、もっとたくさんの情報があるかもしれません。それら個人情報と購入した商品などを紐付けることで、より正確な情報を企業は得ることができます。

お店などでポイントカードを強く勧められたりするのには、ワケがあるのですね。カードユーザはポイントが貯まり、企業は情報がたまる、まさに一石二鳥です。

3. インターネットショッピングとバナー広告
Webのサイトなどを閲覧する際、右や左、上や下にあるバナー広告がありますよね。その広告、以前閲覧した会社や商品、サイトのものだったりしませんか。そうです、皆さんの趣向をサイトの閲覧履歴などで分析し、より閲覧してもらえそうな広告を選んで表示しています。「これを購入した人は、こちらも購入しています」という仕組みは、ERPで収集されたデータを分析した結果だったりします。

どうですか?意外と身近なところでERPは私たちと接点を持っていたことがわかりましたね。私たち消費者の行動を記録し蓄積する、これがERPというシステムが担っているひとつの仕事なのです。

ERPの本当の役割

先の内容でERPでは色々な情報を収集している、という話をしました。しかし、データをためるだけではビジネスの効率は上がりません。これではただの記録になってしまいます。ERPは「データを分析してもらうため」にデータを集めます。

ひとつ、スーパーマーケットを例に考えてみましょう。下の図に、とあるスーパーマーケットの売上内容の一部を切り出してみました。

とあるスーパーの19:00-20:00の売上データ

ERPではこうした売上データが収集され蓄積されています。しかし、データを集めただけで意味がありません。分析し、活用することが必要です。

では、このERPに蓄積された売上データを利用して今後の販売戦略を練るとしたら、どのような戦略が出てくるでしょうか。効率的でより確実な戦略を練るためには、データから導き出される傾向を考えるのが良いでしょう。この売上データから考えられる傾向はどんなものがあるでしょうか。

分類された売上データ

飲み物の種類でデータを分類してみると、アルコールとノンアルコールがあります。アルコールは、週末に売上が上がっているのがわかります。一週間がんばった自分のご褒美でしょうか。また、気温が低い日はアルコールが少ない傾向にあります。気温が高いほうがアルコールはおいしく感じるのかもしれません。

他のところに目を向けてみると、飲み物は主に甘いものや、お菓子などと一緒に購入されている傾向が見えます。飲み物だけ買うケースと比べると圧倒的にセット購入されるケースのほうが多いようです。

では、見えてきたこれらの傾向を利用して、どのような販売戦略が取れるでしょうか。

考えられる戦略

ここでは3つのアプローチで考えてみましょう。

まずは、発注のコントロールによるコストの削減です。周期的に売上が変わることがわかれば、その周期に合わせて発注量をコントロールすることで売れ残りを減らし、品切れを出さずに売り切ることができるかもしれません。今回の例だと、週末にアルコールが売れるとわかったわけですから、週末にかけて商品が確保できると良いでしょう。

次に、顧客の購買ルーチンを把握し、顧客単価の向上を図ります。多くの顧客には購入の癖があります。例えば今回の例だと、「飲み物と甘い物やお菓子がセットで売れる」とわかりました。ということは、今まで飲み物だけを買っていった人たちも工夫次第ではお菓子などを追加購入するという可能性があります。陳列棚を近くにして目に留まりやすくしたり、セットで割引されるクーポンを発行するなど、顧客の購買意欲を引き出し、売上アップを狙うことができるでしょう。

最後に、ターゲット戦略です。売上の傾向がわかればターゲットを明確することができます。そうすることで、より確実で効果的な戦略を講じることができるでしょう。例えば、週末にはアルコールが良く売れるというデータから、タイムセールは金曜日の仕事が終わって帰ってくる時間帯、19:00-21:00ぐらいの間で開始すると集客が見込めるかもしれません。また、「アルコールに合うお菓子」の新商品開発を始めるのもいいかもしれません。

どうでしょう。これらは飽くまでも一例にしか過ぎませんので、たったこれだけのデータではより正確な可能性は導き出せません。しかし、もっと多様なデータが集まればもっと正確な傾向が見えてくるでしょう。

日々発生する多様なデータ。これらの情報もたくさん集まれば、分析することで新しい発見が得られるわけです。企業はやみくもに商品を開発したり、業務改善をしたりするわけではありません。こういったデータの積み重ねから見えてきた情報を利用して、より無駄のない企業活動を行っていくわけです。

業務の効率化による消費者への恩恵

ERPを活用し、業務の効率化が進むことにより企業の「無駄」は大きく削減されていきます。それはもちろん、無駄な出費を抑えるということでもありますから、企業にお金が蓄積されやすくなる、ということです。しかしそれは決して、企業のためだけのものではありません。

ERPによる業務サイクル

お金を確保することは、企業が顧客、すなわち消費者に対して常に新しく、便利で、好まれるものを提供し続けるための資金なのです。そして、無駄を見つけ削減することは、そのための準備です。つまり、私たち消費者にとっても、より良いものを安く手に入れるために、企業のこういった努力が不可欠なのですね。

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