IT業界は日々是勉強

IT業界は日々是勉強

2016.01.20

IT業界で禄を食む者として、時々刻々と進歩するテクノロジーに追随するためには、いわゆる「お勉強」は欠かせません。元来決してお勉強が得意なわけではない筆者が、資格取得とお勉強について、どのようにモチベーションを維持しているのか、思うところを述べてみます。

IT業界では切っても切り離せない「勉強」

こんにちは。講師生活20年、少量多品種インストラクターの千田泰史です。

突然ですが、皆さんは近頃勉強をしていますか?
今回は、懐かしの某予備校を意識したタイトルで失礼いたします。もちろん私も、読者諸兄とおなじくいつもどおり勉強しています。

昨年はかれこれ 5つの IT資格に挑戦し、2度ほどしくじったものの最終的には全て取得しました。近況としては 12月にレッドハット社の EX310資格 (RedHat OpenStack exam) を取得して以降、外国語学習への時間配分を若干多くしていますが、もちろんまた年が明けたら IT関連の資格について、粛々と次の資格の取得準備を進めていく予定です。今回は、私が IT資格を取得する際に心に置いていることと、資格取得が ITエンジニアにとっていかに重要かについて述べてみます。

最初に申し上げておきますが、基本的に「心構え」の話なので、即時に役立つ具体的な手法についてはほとんど触れていません。あしからず。

個人的な思惑

私が IT資格を積極的に取得するようにしている理由は、もちろん、インストラクターの業務上その資格がその科目の講師として登壇するための必須要件あるいは、講師として選ばれるのに有利な条件だったから、ということもありますが、それは最初のきっかけでしかありませんでした。今の自分にとっての一番大きな理由は「IT資格を中心に学習を進めることで、幅広い知識項目を比較的短期間に、かつある程度体系的に身につけることができる」と考えているからです。

……また、各種の資格を取得して以降、実際にそれぞれの資格に関連する分野への関心がさらに高まり、自宅に構築してある実習環境の拡張や改良を加えたり、ソフトウェアを製作、デプロイしたりするなど、趣味と実益を兼ねているという側面も確かに存在しますが、それはまた別の話ですね。

資格に挑戦する意義

ところで、業務等で新たな分野の IT知識を必要としたとき、それを「比較的短時間で」「ある程度体系的に」身につけるために、皆さんならどのような手段を選びますか。じつは、このようなときに、資格取得は最適な方法なのです。その理由は、以下の通りです。

  • たいていの場合、その資格のための教科書や問題集があり、あらかじめ知識項目が整理されている
  • IT資格は、世界中のエンジニアとの共通の話題であり、海外研修やメーリングリストなどのやりとりで仲間を増やすのに有益である
  • 大抵の資格は、受験後すぐに結果が出るため、すぐに次の学習行動に移せる
  • 現場でその技術が必要な場面に遭遇した際、資格をとにかく取得したことによって、その事実を恃(たの)みとして「一度は学んだことがあるはず」という最低限の自身や安心感を得ることができる
  • 大の大人が一ヶ月勉強すればたいていの資格は取れる(と私は考えています。)ので、達成感を得やすい
  • 会社によっては資格手当が付くので、自分に「にんじん」をぶら下げやすい

もちろん、対象とする知識分野によっては、資格取得そのものを知識習得の手段とすることが適さないものもあるでしょう。しかし、IT業界でいつでも必要とされているような、プログラミングやシステム管理などの技術は、この「まず資格ありき」の学習手順が、恐らく最終的には時間的にも金額的にも低コストで目的を達成する最適な方法であると私は感じています。

弁(わきま)えておくべきこと

但し、個人的に思うところとして、ほとんどの IT資格は、そのひとつひとつには、実はそれほど大きな価値は無いかもしれません。しかし、自ら手に入れた資格を複数個組み合わせて、いわば自家薬籠中のものとして必要なときにいつでも実践できるようになると、ITエンジニアにとってこれほどの武器はありません。

確かに、資格を持っていても「ペーパードライバー」などと揶揄されてしまうようなエンジニアはいくらでも居るかもしれませんが、その一方で資格を持たなくても仕事はできると嘯(うそぶく)くエンジニアは、大抵の場合、最新の知識に後れを取っていることを自覚しつつも、内心では己(おのれ)のメッキが剥がれてしまうことを懼れているがゆえの「心理的な合理化」が働いているのでしょう。(……もしくは、資格のレベルを遙かに超越したところに位置する稀少なスーパーエンジニアでしょう。)

資格勉強の心構え

ここで、個人的な学習のコツをいくつか紹介します。あくまで、個人的なものです。

  1. まずは全体を俯瞰してから体系的に学ぶ
  2. 自分が教師となり自分が自分に教える、という形を強く意識する
  3. 「毎日コツコツ」を否定する
  4. 「勉強」に逃避しない
  5. わからないことは素直に先達に訊く

1. まずは全体を俯瞰してから体系的に学ぶ

先ほど「体系的に」という言葉を使いましたが、この場合は「網羅的」と言い換えることもできるでしょう。要するに、学びながら常に全体の範囲を意識することによって、「現状の自分がわかっていない範囲の知識項目を自覚する」ということです。「無知の知」とでも言いましょうか、体系的に学ぶことは、自分がわかっていないところを効率よく発見するために必要なことです。
したがって、新たな分野に知識を広げる初期の頃は、詳細の事項や枝葉末節にとらわれず、できるだけ体系的な学習手段を選ぶべきです。だからこその資格学習なのです。

2. 自分が教師となり自分が自分に教える、という形を強く意識する

これを言い換えるならば「初めっから人に教えるつもりで勉強する」ということです。これなどはいかにも「インストラクターの学習方法」とでも言えましょう。弊社にも数多く在籍していますが、エデュケーション業務を担当するインストラクターたちは、短期間で多くのコースを立ち上げる(註:新規に科目を担当することです)責務に常に追いかけられています。
しかし、この 2.の学習方法を体得し実践できるようになると、新しいコース科目の立ち上げは加速してきます。私なんぞは、今ではマンガや小説を読んでいるときでさえも、人に教えるつもりで無意識のうちに重要なポイントを列挙しているほどです。

3. 「毎日コツコツ」を否定する

「否定」というのは少々誇張した言い方です。「毎日コツコツ」は一見すると勤勉さを形容しているように見えますが、そこに落とし穴があります。生来のメンタル薄弱な私の場合は、コツコツと勉強を続けているという事実だけでついうっかり安心してしまい、物事の深い部分に興味が行かなくなるケースがよくあるなと自己分析しています。そもそも、たとえば「毎日 15分」程度の限られた時間では、学習項目の記憶の再確認ならともかく、深遠なる分野へのディープな学習を進めていくには自ずと限界があります。

そこで、強制的にでも、ある程度まとまった時間を作って、たとえば日曜日まる一日、その項目の学習や動作検証にのみ徹底的に没頭するのです。私も、3連休などが得られた際、ずっとそのことばかりしていたお陰で、深い内容まで踏み込んで理解できた経験は多くあります。しかし、子供と遊ばなければならないなどの事情でなかなかそのような時間が取れない場合は、やむを得ませんが。

4. 「勉強」に逃避しない

この考え方は、以前見かけたこのブログ記事に影響を受けています。

「起-動線」勉強に関するいくつかの警句

若干引用すると 「勉強は「人生の持ち時間を何に費やすべきか」という厳しい問いについて考えることから自分を遠ざける、最良の方法である」 と、非常に手厳しいことが書かれています。

私はこれを常に戒めとしています。ややもすると、勉強することが自己目的化してしまい、自分のアウトプットを期待しなくなりがちであり、いつまでも「ワナビー」でありつづける罠に嵌まります。学習の成果は、どんどんシェアして、初心を思い出し噛み締めながら、どんどん先に進みましょう。

起-動線: http://www.ki-dousen.net/

5. わからないことは素直に先達に訊く

「何事にも先達のあらまほしきことかな」とは、かの兼好法師もおっしゃっていましたが、どのような技術分野においても、社内、社外、そしてネット上や外国にまで目を向ければ、年齢に関係なく先達は数限りなく居るものです。世界のエンジニアたちとお互いに向上心を見せ付け合って成長の糧としましょう。

まとめに代えて

人類の叡智たる知識は蓄積するためのものではなく、共有しながら更新していくものだと私は考えます。IT資格を取り続ける姿勢を示すことで、自分が「知識を更新する準備がいつでもできている人間である」ことを象徴的に表現することになるのです。IT業界は日々是勉強。このような環境を楽しみ、できれば効率よく知識を習得してください。

今回は、IT資格取得のための学習について書きましたが、また機会があれば英語などの語学学習の手法もご紹介したいと思っています。

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