君は Genial Station を知っているか。

君は Genial Station を知っているか。

その情報処理の利便性のため、いまや何をするにも欠かせないコンピューター。皆さんはどのようなマシンを使っていますか。PC、Mac、それともスマホのみでしょうか。私にとってマシンとは、文房具であり、仕事道具であり、アルバムであり、音楽プレイヤーであり、テレビであり、ゲーム機であり……(キリが無い)と、さまざまな側面を持っていますが、嘗て自身のインストラクター業務の「教材」として購入したマシンが非常に特徴的だったので、ご紹介したいと思います。

Naturetech Genial Station 777s

皆さん、こんにちは。千田泰史です。1980年代初頭にパソコン(当時はマイコンと呼称)に触れて以来、趣味に仕事にと数々のマシンを渡り歩いてきた自分ですが、いままで自分が使ったマシンのなかでも特に印象深かったものを1点、今回ご紹介したいと思います。

それは、「Naturetech Genial Station 777s」 です!

ラップトップ型ワークステーション:Genial Station 777s

本体の “ULTRA SPARC DRIVEN” のロゴが何やら誇らしげですが、おそらく読者諸兄の殆どの方は見覚えも聞き覚えも無いものだと思います。台湾の Naturetech というメーカーの製品で、2003年頃にネットで購入しました。価格は 当時で 58万円(!)。我ながら思い切った買い物をしたものです。独身だったから踏ん切りがついたのかもしれませんね。ちなみに、少し調査した結果、このメーカーはもう存在しないようです。

PCではなくワークステーションという主張

UltraSPARC

ご覧のとおり、見た目は「少し大きめのラップトップPC」という風情ですが中身が普通じゃありません。まず、CPUがIntelではなく、さりとてAMDでもなく、 UltraSPARC です。より正確には、UltraSPARC IIe です。

UltraSPARC は、古き佳き時代、旧 Sun Microsystems社が開発した RISC CPU でして、主にサーバー用途で使用されることが多かった CPU です。よく知られている Intel x86アーキテクチャとは、根本的に異なる設計です。

この Genial Station、スペックは以下の通り。

CPU UltraSPARC-IIe 500MHz x 1
RAM 512MB
HDD 20GB
LCD 1024×768
100Mbps NIC / DVD Drive / USB port x 3
OS Solaris9 (SunOS 5.9)

性能は、ほぼ同時期に販売されていた Sun Microsystems 純正ワークステーション Sun Blade 100 と同じです。

もはや本家のサイトも存在しないので、どんなマシンか気になる方はググってみてください。

本体背面、両側面、裏面の様子。端子がいっぱい

ハードディスクドライブは本体側面から取り出し、交換することができるが、あまり活用する場面を想像することができない。

キーボードはじつに静かなタッチであるものの、その質感には硬めのクリック感があり自分にとって大変好みのテイストです。ロゴ入り USBマウスも付いています。

重量が 3.45kg もあるのでとてもズッシリとしています。専用のバッグが付属していて、機能的なポケットが付いているしっかりとした作りでこれまた私のお気に入りです。

快適・快感のキーボードとロゴ入りマウス

 

一時期、このカバンを持って毎日会社に通っていました。製品にぞっこん惚れ込んでいたからなのか、不思議と重さを感じませんでしたね。(遠い目)

しっかりとした作りで汎用性のあるバッグ

購入に至ったきっかけ

さて、なぜ、そもそもこのような好事家のガジェットを購入するに至ったのか。それは、当時担当していた業務と関係があります。UNIXのインストラクターとして、仕事とプライベートの境目が無い感じの時期でした。その頃は Sun Microsystemsの OS、Solaris の講義を担当していましたが、なかでも新たに担当することになった科目“Core Dump Analysis”の学習に苦慮していたのです。

Core Dump とは、システムの クラッシュダンプのこと でして、OSに Panicが発生してシステムダウンした瞬間のメモリ内のイメージがファイルに保存されたものです。これを解析するということは、謂わば システムの死亡分析、司法解剖の知見が必要になります。具体的には、OS Kernelの知識と、CPUのアセンブリ言語、バイナリ解析の知識 です。

しかし、このとき問題になったのが、自宅のパソコンで学習しようにも再現できないということです。なぜなら、自宅のパソコンの CPUは Intel x86アーキテクチャーであり、このコースで教えるべきシステムは Ultra SPARC だからです。

CPU が異なると、そのアセンブリ言語が異なります。x86とは設計思想も異なる世界であるため、どうしても Ultra SPARC のマシンが欲しい!会社だけでなく自宅でも、いつでもどこでもドップリと Solaris / Ultra SPARC の世界に浸りたい!という強い衝動が涌いてきていました。

そんな折りに、たまたま秋葉原で入手したこの製品のチラシを目にしてしまい、1ヶ月ほど煩悶したあげく、ついにネットでポチってしまったという経緯です。注文確定の瞬間は変な汗をかきました。58万円は高かったです。

しかし、後悔はありませんでしたし、今も後悔はしていません。実際に大変役に立ちました。やはり自腹で入手した「資料」は思い入れが違います。決して無駄にはするまいぞと、強い意志で文字通り没頭できました。

色もデザインも格好良くて、「そんじょそこらのマシンとはわけが違うぜ!」という自意識が、心地よい優越感を喚起しました。……オタク根性が痛々しいですね。我ながら。

Genial Stationを動かしてみた

ところで、このマシンは動作するのでしょうか。当然気になりますよね?
そこで、電源ケーブル、マウスを繋げて パワーオン!

……おや?冷却ファンは大きめの回転音を吐き出しますが、数分たっても画面は真っ黒。
やっぱりダメなのかな。さすがに10年近く火を入れてないからなあ。などとガッカリしかけたその時です!

おおッ!画面が映った!!

液晶バックライトは赤みがかっていて年季を感じさせますが、ようやく OBP プロンプト(註:BIOSみたいなもの)が表示されました。どうやら POSTを実行していただけのようです。(註:Power On Self Test … 電源投入時のハードウェア自己診断機能)

しかし、そのOBPのプロンプトから先にはエラーが出てブートアップが進みません。何かを思い出せるかもと、キーボードを叩きながら適当にコマンドを打ち込んでいると、ふと、自分が当時施した設定を思い出し、おもむろに boot disk と入力。無事 ブートプロセスが開始 しました。やはり身体が覚えていたようです。

Can’t open boot device.のエラーメッセージ

そのまましばらくブートメッセージを眺めていると、ついに OSが起動!往年の名OS、UNIX界の雄、Solaris9!!
すみません。ちょっと興奮してしまいました。

今や Oracle Solaris 11.3の時代に Sunの Solaris9が高らかに復活の雄叫びを上げる(送風ファンがうるさい)

そして無事にログインも完了、やがてなつかしの CDE が表示されました。(註: Common Desktop Environment … 当時の 商用UNIXの多数派デフォルト GUI環境)
CDEは GNOMEと比べて味気ないけど無駄が少なく軽量でした。

ようやく、そして、せっかく起動を確認しましたが、この記事を書く目的以外の目的が当面無いので、まもなくシャットダウンと相成りました。このマシンを今も愛していますが、ハードウェアも OSももはや骨董品以外の何物でもないという佇まいです。

こうしてまた、自室の奥底に帰って行く Genial Station でした。何か、これを活用する方法が思いついた方、お気軽にご意見を戴ければ幸いです。

私を育ててくれた骨董品。次回の起動はいつになることやら

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