簿記を学ぼう!~4~ [発生主義について]

簿記を学ぼう!~4~ [発生主義について]

2016.11.30

業務系システムには、必ず関わってくる会計の知識。全ての基本は簿記にあります。今回のテーマは発生主義について、いかにも会計用語でとっつきづらいですが、大切な考え方ですのでおさえていきましょう。

1. はじめに

前回は、期間損益計算 という考え方を通して、見越 と繰延 の処理について学習していきました。さっと振り返っておくと、企業がずっと続くものと考えて、出資者に配当するために、一定の期間内で生まれた利益を正確に計算して配当しようという方法です。

配当金にはみなさん敏感ですから、一定の期間内の利益というのは正しく求められる必要があります。正しい期間で費用と収益を計上しましょうというのが見越と繰延でした。
実は、この 見越と繰延の考え方 が 発生主義 といえるものになります。

2. 発生主義とは

発生主義とは何かを公的機関が決めた定義によると『すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない』 と書かれていたりします。文言がやや難しいので、考え方を変えて、発生主義の対比 として語られる現金主義 からみていきます。

現金主義 というのは、お金の受け渡しをもとに計上 していくことを言います。いわゆるご家庭の家計簿というのはこちらのイメージが強いかと思います。給料を受け取ったら収入として記録し、お金を払うたびに支出を記録し、収入以上の支出がないかをチェックします。
要するに、お金を受け渡しするたびに記録していく方法です。

一方、現金主義ではない考え方が発生主義 です。
例えば、家計簿をつけるときに、悩みどころなのがクレジットカードです。後日お金を支払うという債務 となり、商品を買っても手元に現金は残っているので、自由に使うことはできます。ただし、将来的には、クレジットの分は口座引き落としなどで支払うことになります。

現金主義では、引き落としのときに現金が初めてなくなるのでそこで記録していきます。このやり方だと、クレジットカードの取引が発生したことが引き落としまで記録に残らず、現時点でどれぐらいのお金を使ったかがつかめないため、ついつい使いすぎてしまう可能性があります。

そこで、クレジットの取引が発生したタイミングできちんと記録 しておこうというのが発生主義です。現金がなくなっていなくても、後でお金を払うならば、費用の取引が発生したタイミングで家計簿に書いておきます。収益も同じです。後でお金をもらえるならば、収益の取引が発生したタイミングで記録しておきます。

以上のように、現金が動いていなくても、収益や費用が発生したタイミングで計上しておきましょうという考え方が発生主義です。

3. 現金主義

上の図をご覧ください。ある男性の家計簿の付け方を例にしています。
彼は、受け取った給与として、現金5万円、預金20万円、合計25万のお金を持っています。クレジットカードを使った場合にどうやって家計簿に記録していくのかについて、現金主義と発生主義の違いに着目します。

まずは、現金主義 から。

現金主義 では、お金を受け渡すときに記録 しますので、クレジットカードを使ったタイミングでは家計簿には何も記録しません。現金5万円、預金20万円、合計25万のままです。数日後、家計簿をみると、25万もあったので、クレジットカードの返済分に気付かずに、通勤のため自転車を購入してしまいます。口座から引き落として10万の現金を支払いましたので記録しておきます。
しかし、月末に、クレジットカードの返済を忘れていたので、引き落としの通知がきていた分を家計簿に記録すると 5万円の赤字 になっていることがわかりました。彼は、銀行が立て替えた分を後日きちんと返済します。

このように、現金主義の場合は、後日、お金を払います、受け取ります、という取引については、現金が受け渡しされるまで家計簿で確認できなくなることがわかります。

4. 発生主義

上の図をご覧ください。次は、現金主義ではない考え方、発生主義 で家計簿をつけていきます。お金の受け渡しにかかわらず、取引が発生した段階で記録 していきます。

さっきと同じ例を発生主義でみていきます。
クレジットカードを使ったタイミングで取引が発生していますので家計簿に記録しておきます。例えば、お金を払ったものとして、預金を20万円差し引いて、残りの合計は5万円です。数日後、通勤のため自転車を買おうか悩みましたが、家計簿をみたら5万円しかなかったので、何も買わずに歩きで通勤することにしました。そして、クレジットカードの返済日にお金を払うことになりますが、すでに家計簿に反映してありますのでそのままです。最終的に、5万円を計画的 に節約 することができています。

実際の複式簿記 では、もっとしっかりと管理をしていきますが、現金主義では帳簿に必要な情報が反映しきれないことが何となく分かるかと思います。一方、発生主義であれば取引の情報を帳簿に反映することができます。

5. 現金主義から発生主義へ移り変わって生まれた考え方とは?

会計の歴史としては、19世紀ごろから 現金主義 から 発生主義へ と移り変わっていくことになりますが、要因として大きなものが2つ。
信用取引の一般化 と 固定資産の減価償却 です。

信用取引 は、いわゆる 掛取引 です。商品は先にもらいますが、支払は後日に行いますといった取引などです。簿記でいうと 売掛金 や 買掛金 を使うものです。身近なイメージとしてはクレジットカードです。

先ほどの家計簿の例を思い出してもらえればと思いますが、クレジットカードを使えば使うほど、現金主義では現在の財産状況を記録するのが難しいので、発生主義的な考えの方が正確な情報を反映しているようにみえます。
この掛取引が一般的によく使われるようになったことにより、現金主義から発生主義へ向かう動きが高まっていきました。

また、もう一つの要因である 固定資産の減価償却 はまさに発生主義に基づいたものとなります。この減価償却の考え方がはっきりと登場するのは、18~19世紀のイギリスの産業革命後 です。工場や機械など溢れかえっている固定資産をどのように処理すべきか、会計にも大きな変化が求められていった時代です。
特に、減価償却に関連する問題は大きいもので、この問題に対する考え方を確立していくことが近代会計につながってきます。

いかがでしたでしょうか?ここまで、「現金主義」と「発生主義」の違いについて、身近な例を交えながらご紹介をしてみました。今回の内容は、簿記に関わらず、普段の生活にも役立つ情報となったのではないか?と思います。ぜひ、この考え方を活用してみてください。

次回は、この「発生主義」によって登場した 「固定資産の減価償却」 について取り上げてみたいと思います。

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