Society5.0の実現に向けた改革の要諦(2) 日本のIT人材の現状

Society5.0の実現に向けた改革の要諦(2) 日本のIT人材の現状

2017.09.11

未来投資会議が開催され、未来投資戦略のテーマとして「Society 5.0の実現に向けた改革」がいよいよスタートしました。今後イノベーションをめぐる疾風怒涛の国際競争が激しくなる中、我が国は、その実現をもって日本再興を目指しています。前編ではアメリカをはじめとした「世界的なムーブメント」に触れました。今回は、さらに理解を深めていただくことを目的として、様々な角度から我が国の現状と課題を探ります。

はじめに

第4次産業革命をはじめとする我が国の将来の成長に資する分野への『未来への投資の拡大』に向けた成長戦略と構造改革の加速化を図ることを官民連携で取組む青写真が、未来来投資会議(2016年9月~2017年6月まで全10回)の2017年6月9日:第10回会議にて『未来投資戦略2017』がまとめられ(同日閣議決定)、『我が国の再興の鍵』となる未来投資戦略のテーマが「Society5.0の実現に向けた改革」として策定されました。今後我が国が実現しようとする未来の姿が描かれ、「Society5.0」をグランドデザインとしてあらゆる政策や投資が実施されることとなりますが、その実現に向けて、まずは我が国の現状をしっかりと確認してみます。

また、前提知識として「Society5.0」の詳細な内容は、内閣府日本経済再生本部が作成した資料をWebにてご参照ください。

参考資料:「未来投資戦略2017-Society5.0に向けた改革-」
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0609/shiryo_07.pdf

ICTの国際競争力と国内IT支出の関係

世界経済フォーラム(World Economic Forum)が発表したThe Global Information Technology Report 2016によるとICT国際競争力ランキングで我が国は前年同様10位となりました。2005年に8位になって以降、ランキングを落とし20位前後で低迷しようやく10位以内に返り咲きました。

The Global Information Technology Report 2016における日本のランキング

項目順位
総合順位10
ビジネスの利用3
理数系教育の質9
スキル14
教育システムの質27
ビジネスと革新の環境33
学校でのインターネット環境37
適正価格49
知識集約型の仕事の率58

出典:The Global Information Technology Report 2016 World Economic Forum (http://www3.weforum.org/docs/GITR2016/WEF_GITR_Full_Report.pdf))を加工して作成

しかしながら、総合評価では10位ですが、評価項目の詳細を見ると、教育システムの質27位、ビジネスと革新の環境33位、適正価格49位、知的集約型の仕事の率58位などいくつかの課題が見えてきます。IDCジャパンのレポートによると、国内ITに対する支出は、2017年の国内IT市場規模は14兆9,891億円(前年比成長率2.0%)と予測されています。これは、アメリカ、中国に次いで世界第3位です。この支出により世界経済フォーラムのICT国際競争力でビジネスの利用は3位と一見すると支出相応の支出に思われますが、総合ランキングを押し下げているスキルをはじめとした上記の項目では、投資対効果の悪さが示される結果となっています。例えば、支出は世界第3位ですが、適正価格は49位とそもそも無駄な投資によって、教育システムの質や知的集約型の仕事の率の改善へ向けられるべき投資の妨げになっているといっても過言ではありません。

出典:国内IT市場産業別企業規模別予測2017年~2021年(http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20170602Apr.html)IDC Japanを加工して作成

中学で始まる理数離れ

Organisation for Economic Co-operation and Development(OECD:経済協力開発機構)が実施している「Programme for International Student Assessment2015(PISA2015:生徒の学習到達度調査)において、平均得点が数学的リテラシー:5位、科学的リテラシー:2位、読解力:8位と順位では上位にあり向上傾向にあります。

 

出典:「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイント」(国立教育政策研究所)(http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/01_point.pdf)を加工して作成

一方、The International Association for the Evaluation of Educational Achievement(IEA:国際教育到達度評価学会)が実施している「Trends in International Mathematics and Science Study2015(TIMS2015:国際数学・理科教育動向調査)」で小学生の段階では『算数・理科は得意だ』とする意識は、算数では国際平均と同等、理科は国際平均を上回り「面白い・楽しい・好きだ」というモチベーション高い傾向にあります。一転、中学生になると『数学・理科は得意だ』とする意識は、国際平均をも下回り、小学生の段階と比較して、算数・数学ではマイナス23ポイント、理科ではマイナス39ポイントと大幅に下回ります。『将来、自分が望む仕事につくために、良い成績をとる必要がある』という割合はいずれも上昇傾向にはあるものの、国際平均を大幅に下回り「面白くない・楽しくない・嫌いだ」というモチベーション低さが目立ちます。高等教育への素地となる中学生から理数離れが表面化しています。

Trends in International Mathematics and Science Study2015における意識調査結果

出典:「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント」(文部科学省)(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2016/12/27/1379931_1_1.pdf)を加工して作成

拍車がかかる人口減少

ご承知の通り、我が国は急速に人口減少と少子高齢化の道を突き進んでいます。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」と総務省「労働力調査」によると生産年齢人口(15歳~65歳未満)は2013年8,017万人から2025年には7,084万人とわずか12年間で933万人減少すると予想しています。これは、神奈川県の人口(自治体第2位)916万人を上回る人数です。

また、厚生労働省が発表した平成28年人口動態統計年間推計において、2016年生まれの子どもの数(出生数)が100万人を割込み98万1,000人なった発表がありました。必然的に、18歳人口は右肩下がりで2031年には100万人を割ることが予想されています。我が国の年間出生数が100万人を下回るのは1899年に人口動態統計を開始してから初めてのことで、少子化と人口減少に拍車がかかっている状況下にあります。

出典:「理工系人材育成戦略」(文部科学省)(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/03/13/1351892_02.pdf)を加工して作成

人口の減少がもたらす危機

経済産業省のIT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果では、2015年時点で約17万人のIT人材が不足しているという結果で、今後新卒者の規模や動向等の人材供給の条件に今後大きな変化がなければ、人口減少に伴ってIT関連産業への入職者数は減少する見通しになっています。供給力が低下するにもかかわらず、ITニーズの拡大によってIT市場は今後も拡大を続けることが見込まれるため、IT人材不足は今後ますます深刻化し、 2030年には、高位シナリオの場合約79万人~中位シナリオの場合約59万人IT人材の不足規模が拡大するとされています。このIT人材不足に対して経済産業省では、シニヤ層の活用、女性の活用、外国籍人材の活用を施策としてあげています。

 

IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果

出典:「報告書概要版(IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果)」(経済産業省(http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/27FY/ITjinzai_report_summary.pdf)を加工して作成

同様に、理・工・農学分野の学部学生の人数は、1999年(平成11年)をピークに減少傾向にあります。全学部生に対する理・工・農学分野の学生割合は平成12年:23.0%から平成25年:19.3%と3.7ポイント下げており、グラフでも分かるようにIT関連産業へのエントリーが期待される工学系の学部学生の減少が理学・農学部分野の学部と比較して顕著になっています。著者が2014年に大手学生向け就職情報サイトの編集長とサイトに登録している学生の就職先のエントリー実態と課題について討議した際、「2009年まではサイト登録学生のIT業界へのエントリーが7%台を維持していた。2010年に7%を割込み2013年に6%を割った」と話されていました。文系からのエントリーも多いようですが、工学部など専門教育を受けた学生のIT関連産業への入職者数が減少傾向にあることを裏付けています。先に述べた中学生の数学・理科に対するモチベーション低さがからくる理・数系離れの現象に歯止めがかかる施策を打たない限り、今後著しく減少することが容易に予想されます。

出典:「理工系人材育成戦略」(文部科学省)(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/03/13/1351892_02.pdf

シリーズ第3回は、海外IT人材との意識面での比較を通して浮き彫りとなる我が国の課題を解説します。

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