人財育成担当者から見る「ITエンジニアの技術の空洞化」(1)空洞化の現状と背景

人財育成担当者から見る「ITエンジニアの技術の空洞化」(1)空洞化の現状と背景

2017.10.13

入社から2,3年と経った若手エンジニアでも、まだ技術力が不安定…そんな、「技術の空洞化」を感じている人財育成担当者も、多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、この「技術の空洞化」がなぜ起こっているのか、その現状と背景を、人財育成担当の目線からご紹介したいと思います。

はじめに

筆者は、企業のITエンジニア育成の課題をお聞きし、研修の内容を考えていくという立場で、システムインテグレーション企業(SIer)や、ITサービス業の人財育成担当者の方を中心に、人財育成についての課題・現在の育成プランをはじめとする取り組みをお伺いしています。

若手エンジニアの人財育成に対する悩み…社内教育はどこまですべきか?

お話を伺っている中で、聞こえてくる課題の多くは若手エンジニアの人財育成についてです。

SIer、ITサービス業の新人研修では、まずIT基礎技術を学び、研修後にはOJTの中で更に必要な技術を習得します。しかし、現在の目まぐるしく進化するIT技術の中で、この新人研修後の育成について課題を抱えられていらっしゃることが多いです。

そもそも、現在の若手エンジニアが抱える技術習得の課題とIT技術の進化から、社内教育をどこまでなのでしょうか?

数回にわたり、この問題について考えたいと思いますが、今回は、現在の若手エンジニアの取り巻く環境について見てみます。

人財育成担当者から見たITエンジニアの現状「技術の空洞化」

IT基礎を知らない、若手エンジニア

人財育成担当者の方とお話をする中で、複数の方から特に若手エンジニアの課題として「IT基礎を知らない」「IT技術の習得が低いのではないか」という声を耳にしました。

入社時に新人研修で3ヶ月~6ヶ月間の基礎研修を経て配属され、配属後も業務に必要な技術スキルの習得はさせている、という企業も多くあるにもかかわらず、なぜこういった現状が起こっているのでしょうか。

「技術の空洞化」

ある企業の人財育成担当者の方から次のような課題があるとお聞きしました。

「現在所属部署での課題は若手の『技術の空洞化』をどうすべきかを検討しています。」

この「技術の空洞化」とは、例えば業務で実際に携わっている製品やサービスに関する技術や、その周辺の技術・知識はあるが、他の分野のIT基礎を知らない、もしくは、持っている技術も低い、という状況をここでは指しています。これは、技術力のある企業においても起こっています。

この「技術の空洞化」が起こっている背景に何があるのでしょうか。

「技術の空洞化」が起きている背景

「技術の空洞化」は、身近に利用する端末の変化と、クラウド化が大きな原因となっていると筆者は考えています。

使用端末の変化

これは言うまでもないかもしれませんが、現在のIT技術の進歩は目覚ましく、この10年で大きく変化しました。

パソコンのみならずタブレット端末の普及、携帯電話はスマートフォンへ、ネットワークは有線から無線へ、そしてハードはクラウドやソフトウェアに(SDx; Software Defined X)…などが挙げられます。

総務省の調査によると、インターネットを利用する機器はPCだけに限らず、スマートフォン、タブレットに取って代わりつつあり、特に若手層はその傾向が顕著であることがわかります。これに伴い、自宅にパソコンがないことも当たり前となってきています。

出典:総務省『平成28年通信利用動向調査』「2インターネットの利用動向②」

家庭での普及率とは異なり、企業の業務で使用される端末はまだまだパソコンが主流です。
しかしこの2,3年、新人研修の時期に話題にあがるのは様々な業界で新入社員の中には学生時代にタブレット・スマートフォンの使用経験しかなく、PCの基本的な機能(マウスクリック、キーボード入力、ファイルの移動・コピー)を知らず、新人研修の講師、配属後の上司、先輩の指示が伝わらないという問題が出ているとの話も出てきています(参考:マイナビ「スマホ世代だから? 今年の新入社員の1割以上がパソコンの知識皆無! 「クリックって何?」状態も」)。

20年前パソコンの登場直後にあった「PCの基本的な機能を知らない」から、タブレット端末の普及に伴い「PCの基本的な機能を知らない」へと時代が逆行しています。そういった状況から、新人研修にPCの基本操作の研修を復活させることを検討している動きがあります。

ハードを知らない若者たち

端末以外のIT技術についても取り巻く環境も大きく変化しています。

ネットワークは有線から無線へ、サーバ構築はハードウェアを使っての構築からインターネット上で操作しクラウド上に構築する時代へ、となりました。

機器から機器をつなぐために、ポートにケーブルを挿すという作業もなくなり、端子の違いも判らなかったり、ハードディスクやメモリを見たことがなかったり…ということも当たり前に起こりうるのです。

若手ITエンジニアを取り巻く環境と世代ギャップ

人材不足と、研修の現状

現在起こっている傾向として、新人研修の共通の基礎を学ぶ期間が短くし、配属先のOJTと並行して業務に必要な技術を習得することを優先されます。現場も人手不足ですから、早く現場に出し、現場で仕事をしながら覚えていく、という企業が多いのです。

しかしその結果、指示された業務範囲の必要な技術スキルは身につくが、以前なら入社時~3年までに習得できた幅広い基礎知識までなかなか身につけられる状況ではないことが見受けられます。

その背景には、もちろん先に述べた研修期間の短縮もありますが、実際にハードウェアを触って手を動かして作業をすることが減っている中、必要な技術知識の必要性について気づけないことも影響しているのでは推測されます。

OJT時の世代ギャップから生まれる問題

先輩エンジニアの新人時代と技術習得のスタイルが変化していることから、OJTの中で認識のギャップが発生しています。

以前は、入社時~3年までには習得していた技術・知識について、若手社員には、学ぶ機会を逃してきている人もいます。そして、指示しても知らない、できないという反応に「なぜできない、なぜ知らない?」という疑問が生じます。

学んでいる技術・知識範囲が異なることに先輩エンジニアの方々も気づけていないこともあり、互いに不信感を抱くことにもつながりかねません。

しかしながら、各社の育成体制や研修プランの見直しが、まだ追い付いていない企業が多いのが現状です。

次回は

いかがでしたでしょうか。今回は、現状やその背景を中心にご紹介をしてきました。

次回は「技術の空洞化」の課題について、若手のITエンジニアとして最低限必要な技術をいつまでにどこまで習得すべきか、また上司、先輩から指示されなくても楽しく技術を習得する環境をどのように作ることができるか、など、「技術の空洞化」を埋めるための教育の姿についてお話したいと思います。

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