AI Chronicle (3) ー チューリングテストと機械の知性

AI Chronicle (3) ー チューリングテストと機械の知性

2017.12.28

2045年に迎えるといわれている「シンギュラリティ」(技術的特異点)。AIが自身よりも優れたAIをつくることができるようになる地点、つまり、人間を超えるといわれている点です。しかしながら、AIや機械が知的かどうかをどのように、誰が判定するのでしょうか?今回は「チューリングテスト」についてご紹介します。

チューリングテストとは

チューリングテストとは、Alan Mathison Turingが開発したテストで、「機械が知的かどうかを判定するためのテスト」であり、以下のように実施されます。

「人間の判定者が、一人の(別の)人間と一機の機械に対して通常の言語での会話を行い、判定者が、機械と人間との確実な区別ができなかった場合、この機械はテストに合格したことになる。」というものです。

1950年10月に発表された論文「計算する機械と知性」の中で、『人間の質問者が機械と会話をし、それを人間か機械か判別できないならば、その機械が「思考する」もしくは「知的である」といえる』という1つの仮説が出されました。つまりチューリングテストとは、何を以てAIの「知性」を判断するかの1つの基準を表したものです。

機械の知性とは

それから 60年以上経った2014年6月、イギリス・レディング大学で開かれた「turing test 2014」で「Eugene」という少年を模した AI が世界で初めてチューリングテストに合格しました。

波紋を呼ぶ「Eugene」

しかし、行われたチューリングテストの条件が非常に偏っており合格とは言い難いと、各所に波紋を投げかける結果となりました。チューリングテストは、自然言語(日常会話文)で応対が出来るシステムと、複数人の審査員が自由に会話をし、どれだけの審査員がこのシステムを人間と判断するかというもので、一見公正なテストに見えますが「turing test 2014」では以下のような制限がありました。

  • 対話は文字での会話のみ
  • 「Eugene」君は13歳のウクライナ在住で英語は母国語でないため得意ではない
  • 試験時間はおよそ5~10分間

チューリングテスト中、「Eugene」君は分かる質問には流暢に答えを出していますが、分からない質問をされると話題を切り替えようとはぐらかしたり、少し皮肉めいたユーモアを交えた返答をしたとされています。この応答から審査員の約 33 %が「Eugene」君を人間だと判断し、「Eugene」君は史上初めてチューリングテストに合格しました。

「Eugene」と乖離するAI像

チューリングテストに合格した「Eugene」君は、分類すると「チャットボット」の一種といえます。日本では2015年に話題になった、Microsoft社の「りんな」がありますが、これもキャラクター性を持たせたチャットボットです。

しかし昨今のAIはコミュニケーションを目的としたAIだけではありません。

様々な画像や音声の認識、情報の可視化、作業の自動化、など、汎用的ではなく専門分野を絞ったものが多く実用化されつつあります。防犯カメラに接続された AI は、今では人の流れ、状態、不審な動きまでを判断できるようになっています。

このように喋らず黙々と仕事をするAIはチューリングテストではその知性を測ることはできません。これらのAIに知性は生まれる事はありえないのでしょうか?

「人間の思考過程を模倣する機械」としてのAIへ

Alan Mathison turingの論文が発表された当時、人工知能は「人間の思考過程を模倣する機械」であるとされ哲学的な思想が濃かった背景があります。

現在、様々な分野で発展しているAIは、数理論理や認知科学を基に設計され、コンピュータ等と繋がる事を前提にした、いわば「AI部品」です。単純にチューリングテストを当てはめることはあまり有効とは言えません。

数学的思想から生まれた「AI部品」と、哲学的思想から生まれた「指示をする強いAI」

音声指示によって、家電や様々な機器をコントロールする技術の実用性が高まってきており、機械と喋るコミュニケーションを取ることが現実味を帯びています。

近い将来、「あるシステム」に自然言語で指示を出し、システムは指示を解釈して、自分のコントロールするロボットやIoTデバイスたちに命令を出すようになる、コントロールサーバのようなAIが登場してくるのではないかと予想できます。

その制御下にあるコンピュータシステムや、さらに末端につながるAI部品、IoT部品が「そのシステム」と現実をつなぐ手や目として接続されたとき、AIが1つのシステムを維持管理する「強いAI」が生まれるかもしれません。

哲学的思想が目指した「人間の思考過程を模倣する機械」は、数学的思想によって生み出された細かなAI部品から作られ、それを繋ぎ合わせて行くことで実現へと近づいています。

それが「テクノロジカルシンギュラリティ」となるかは分かりませんが、その時に初めて「チューリングテスト」が目指した意味とAIとが附合し、AIは人と対話をし、環境を理解し、課題を解決してくれる、人類が古くから夢見た人工知能となっているかもしれません。

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