化学分析機器を学ぼう(1) クロマトグラフィーとクロマトグラフ

化学分析機器を学ぼう(1) クロマトグラフィーとクロマトグラフ

製造会社、企業団、研究所や学校で、製品/材料開発や研究などを行う際に使われる化学分析機器。一言にいっても、分析の目的や用途によって、さまざまな機器や手法が存在します。今回は、その中で代表的な「クロマトグラフ」について、その仕組みと、また「クロマトグラフィー」という分離分析手法の原理を、身近にあるものを使ったペーパークロマトグラフィーを用いて簡単にご紹介します。

クロマトグラフとは?

世の中には、様々な分析機器があります。分析機器とは物質の組成、構造、性質、状態を定性的(どんな成分が) / 定量的(どれだけの量が含まれているか) に測定する機械や器具等の事です。

クロマトグラフは分析機器の種類の1つ

分析機器は、ラボラトリー用 / 環境・公害用 / プロセス・作業現場用 / 作業環境・保安用 / 医用 / バイオ関連、と用途別に分類する事ができ、その中のラボラトリー用 / 環境・公害用 / プロセス・作業現場用に、「クロマトグラフ」が含まれます。

表1はラボラトリー用分析機器の例を挙げておりますが、分離分析装置の種類の1つです。クロマトグラフィーという分離手法を用いた機器で、試料中の成分を分離させ機器に搭載または外部接続している検出部で含有量に相当する化学量を測定します。

機器分類代表的な装置
電気化学分析装置ポーラログラフ、電気滴定装置、導電率計、電極式濃度測定装置、電気滴定装置など
光分析装置分光光度計(紫外・可視、赤外、ラマン)原子吸光分析装置、蛍光光度分析装置、誘導結合高周波プラズマ発光分析装置など
電磁気分析装置質量分析装置(二重収束型、四重極型、GC/MS、LS/MS、ICP-MS、飛行時間型)、X線分析装置(回析、吸収、応用)、共鳴装置(核磁気、フーリエ変換型、電子スピン)、電子分光装置、顕微鏡(透過電子、走査、走査トンネル)など
分離分析装置ガスクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフ、イオンクロマトグラフ、超臨界流体クロマトグラフ、電気泳動装置など
分解・蒸留・分離・濃縮装置分解装置、蒸留装置、遠心分離装置、透析装置、濃縮装置、固相・液相・超臨界抽出装置など
熱分析・熱測定装置熱重量測定装置、示差熱分析装置、示差走査熱量測定装置、膨張及び熱機械的分析装置、熱伝導率計、熱量計など
その他の測定装置有機微量元素分析装置及びガス分析装置、水分測定装置、密度測定装置、分析用天秤、におい識別装置など

表1. ラボラトリー用分析機器の代表的な種類

クロマトグラフィーについて

では次に、分析手法である「クロマトグラフィー」とは何なのかを簡単に紹介します。

クロマトグラフィーは、ロシアの植物学者ミハイル・ツヴェット氏が、植物色素の成分を分離する手法として発見しました。『色』の意味の「Chroma (クロマ)」と、『記録する』の意味の「Graphos (グラフ)」から、「Chromatography (クロマトグラフィー)」と呼ばれています。

原理としては、測定したい試料を『移動相』によって運び、『固定相』の中を通すことで試料中の各成分が『固定相』との相互作用(分配、吸着など)の大小に応じで分離されます。

移動相の種類によって分析手法が異なり、移動相に気体を用いる手法をガスクロマトグラフィー(GC, *1)と呼び、液体を用いる手法を高速液体クロマトグラフィー(HPLC, *2)と呼びます。

また超臨界流体クロマトグラフィー(SFC, *3)というのがありますが、こちらはHPLCと同じ装置で移動相に超臨界流体(*4)を用いる手法です。主に二酸化炭素が使用されますが、液化炭酸ボンベから採取します。

*1 GC=Gas Chromatography
*2 HPLC=High Performance Liquid Chromatography
*3 SFC=Supercritical Fluid Chromatography
*4 超臨界流体=臨界点以上の温度や圧力下においた物質の状態で気体と液体の区別ができない状態

固定相にはどんな種類があるだろう

固定相は大きく2つに分類することができます。固定相のことを「カラム」と呼びます。

  1. パックドカラム(充填カラム)
    ガラスやステンレスのチューブ内に担体と呼ばれるケイ藻土・アルミナ・シリカゲル・モレキュラーシーブなどの吸着剤を充填したもの。
  2. キャピラリーカラム(オープンチューブラカラム)
    溶融シリカ(*5)やステンレスの空中細管の内壁に「液相」と呼ばれる液体状高分子化合物を塗布、または化学結合したものや、担体に液相を塗布したものがあります。

充填カラム

キャピラリーカラム

固定相で分離する方法は分析手法により異なります。ガスクロマトグラフィーは吸着と分配、高速液体クロマトグラフィーでは吸着と分配以外に、イオン交換・イオン排除・サイズ排除・アンフィニティーなど、さまざまな機構で分離させます。

*5 石英ガラスとも呼ばれる。光ファイバーの材料でも使用される。

キャピラリーカラム(オープンチューブラカラム)

固定相で分離された成分はどうなるの?

カラムで分離された各成分は、検出部に到達します。試料を注入してから検出されるまでの時間を「リテンションタイム」と呼び、化合物ごとに異なるリテンションタイムで、検出部により波形が出力されます。これを「ピーク」と呼びます。

ピークは、検出された濃度に応じで面積値や強度などのレスポンスが変化します。検出部で得られたデータを専用のアプリケーションソフトで評価/分析し、どのような成分がどの位の量含まれていたかを調べることができます。このデータの事を「クロマトグラム (Chromatogram)」と呼びます。

同じ条件下の装置で測定した同じ化合物は、リテンションタイムやレスポンスの再現性がほぼ同じになります。これを利用し定性分析や定量分析を行います。このような分離分析を行う装置が「クロマトグラフ(*6)」です。

「クロマトグラフィー」、「クロマトグラフ」、「クロマトグラム」

「クロマトグラフィー」、「クロマトグラフ」、「クロマトグラム」と似たような言葉を紹介しましたが、まとめると次のようになります。

  • クロマトグラフィー 分析手法
  • クロマトグラフ   分析装置
  • クロマトグラム   分析の結果得られたデータ

分析手法と装置名でGCやHPLCと呼ばれるので、業界の方々はどちらを指しているか区別しながら話をしています。

*6 Chromatograph
(GC=Gas Chromatograph、HPLC=High Performance Liquid Chromatograph)

ペーパークロマトグラフィーを使ってイメージしてみよう

クロマトグラフィーを簡単にイメージしやすい例として、ペーパークロマトグラフィーがありますので紹介します。ろ紙と水で水性サインペンの色を分離する事ができ、身近な道具で試すことができます。

サインペンの分離実験

サインペンにはいくつかの色がありますが、1つの色を作るために、複数の色を混ぜて表現しています。

CMYKという言葉を耳にしたことはあるでしょうか。お勤めされている方は、会社にカラープリンタがあったらプリンタのトナーの色を見て下さい。ご家庭にインクジェットプリンタをお持ちの方は、インクカートリッジの種類を見ていただくと“C”、“M”、“Y”、“K”という文字が含まれた標記があると思います。“C”はCyan=シアン、”M”はMagenta=マゼンタ、“Y”はYellow=イエロー、“K”はBlackではなくKey Plate=キープレートを指します。

CMYKの色

キープレートとは元々、輪郭や細部を表現する為のプレート(印刷版)の事で黒色です。シアン、マゼンタ、イエローの色を混ぜると理論上は黒になりますが、用紙やインクの特性から綺麗な黒にはならずに濁った茶色になります。その為に、黒色も使って綺麗な色にします。

サインペンも同じ事が言えるので、ペーパークロマトグラフィーで色素を分離すると、CMYKの色に分かれる事になります。ペーパークロマトグラフィーの場合、ろ紙が固定相となり、水が移動相になります。

分離実験をやってみよう!

それでは、実際に身近なものでできる分離実験をやってみます。

用意するもの

次のものを用意します。

  • 水性サインペン (今回の分析対象)
  • コーヒーフィルタ
  • コップ
  • 割箸
  • ハサミ
  • ラップ(机を汚さないため)

実験手順① 黒のサインペン

まずは、黒のサインペンで実験をしてみます。

①短冊状に切ったコーヒーフィルタにサインペンで下側1cm程度の個所にマークする(丸を書く)。

②マークしていない上側を割箸ではさみ、コップの底から1㎝程、水を入れて、マークした丸より下を水につける。

③毛細管現象が起こり、水が上がってくる。

④しばらくすると、青色の成分が先に移動し、墨色の成分が後から上がり、分離される。

実験手順② 黄緑のサインペン

次に、黄緑のサインペンでも、同様の実験をしてみます。手順は、先ほどの黒のサインペンの場合と同じです。

実験結果を比べてみる

黒のサインペンと、黄緑のサインペンの実験で分離がされた、ろ紙を比べてみます。

左が黄緑、右が黒のサインペンです。

ご覧いただくと、左の黄緑のサインペンの結果は、上のほうに水色、つまり「シアン」があり、その次に黄色「イエロー」があることがわかります。つまり、黄緑色は、シアンとイエローで混ざり合っていることがわかります。

一方で、右の黒のサインペンの結果は、上のほうに「シアン」があり、少し「イエロー」や「マゼンタ」が混ざったあと、黒のインクがあることがわかります。このように、黒といってもいろんな色が混ざっていることがわかります。

興味のある方は、ぜひ他の色を分離してみたり、同じような色でも、違うメーカーのものを比べてみるのもいいかもしれません。

今回はここまで

以上、いかがでしたでしょうか?

今回は、分析機器の中から、クロマトグラフの仕組みをご紹介するとともに、家庭でも簡単にできる実験を使って、どのような結果が得られるのかをご紹介しました。次回は、実際にどんな場面でクロマトグラフが使われているのかについて、注目していきたいと思います。

 

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