RPA道場(2) RPAの特性と、導入時に注目しておきたいことって?

RPA道場(2) RPAの特性と、導入時に注目しておきたいことって?

2018.03.14

前回は、入門として、RPAとは何かを大まかにご紹介しました。RPAは「働き方改革」「生産性革命」の重要な一端を担うと期待されており、ロボットによって業務プロセスの自動化を実現することができます。今回は、その導入時に注目したい点についてまとめてみました。通常のシステム導入とは少し違った、「RPAならでは」の注意点も取り上げます。

RPAはなぜ今求められているのか?

今回は、RPAの導入についてご紹介をしていきたいと思いますが、その前に、「RPAとは何か?」「なぜ注目されているのか?」を、もう一度確認しておきたいと思います。

働き方を変えるための第一歩「RPA」

今や日本での重要課題として「働き方改革」が取り上げられ、メディアでも大きく注目されています。政府も、「働き方改革によって、誰もが生きがいを感じて、その能力を思う存分発揮すれば、少子高齢化も克服できる」と述べています。

しかし、現実の日々の業務の中では、定期的に発生するルーチン・ワークや膨大なデータ入力処理作業が行われています。また一方では、残業規制が強化され、ますます時間に追われている現状を感じているのではないでしょうか。

こうした危機的な状況を打開する一つのツールが、RPA(Robotic Process Automation)です。RPAは別名「デジタルレイバー」とも呼ばれており、ロボットによって、作業プロセスの自動化を実現することができます。人間と一緒に働く仲間として期待されています。つまり、今後はロボットと共に働く時代に変わっていくということです。

ちなみに、RPAでいう「ロボット」は、実態のあるロボットではなく、「ソフトウェアロボット」を指しています。

まだまだ単純業務しかできないが、今後私たちの力になる「デジタルレイバー」

一方では、人間が「デジタルレイバー」に仕事を奪われてしまうという誤解があるのではないでしょうか。昨今のAI関連の記事でも同様ですね。

しかし、現時点でのロボットの動作は、あくまでも人間の指示に従って作業を正確に実施するレベルに過ぎません。ある一定の操作を繰り返して行うものや、ルールが確立されている定型業務、または大容量のデータを扱うため時間のかかる業務では、RPAは正確かつ高速に処理をすることが可能であるため、適しています。しかし、人間と同じような、判断や意思決定が必要な場面での活用には、まだまだ時間がかかります。

マネージャの職務は、これまでは人間の部下の育成や管理を行うことでしたが、今後はロボットを管理することが含まれる可能性があります。各ロボットの稼働状況の確認、また今後はAIによって動くロボットが勝手に不正な処理をしていないか?といった、「野良ロボット」の監視も重要な業務となります。

このように、新たな業務も増えるかもしれませんが、とはいえ、基本的にはこれまで人間がパソコンに向かって時間をかけ繰り返し行ってきた作業を「デジタルレイバー」に委ねることで生まれる時間を、より創造的で、人間ではないとできない高度な業務に取り組む時間に充てることができるようになります。これまで以上に生きがいを感じて働く時間が増えていくと考えられます。

今後、「デジタルレイバー」に任せていける業務

日本生産性本部が発表している「労働生産性の国際比較2017年版」では、日本の時間当たりの労働生産性は、OECD加盟35ヶ国中、20位の46.0ドルとなっています。これは米国の3分の2の水準で、主要先進7ヶ国の中でも最下位となっています。

図表1. OECD加盟諸国の時間あたり労働生産性

しかも今後、日本の就業者数の減少が確実視されている状況下では、いかにして日本の経済を成長させるか?ということへの対策も急務です。

生産性革命

「働き方改革」と同様に「AI・ロボット」などの技術革新を取り入れ、「生産性革命」への流れを先取りしなければならないと言われています。

では、自分の会社を振り返ってみて、従業員一人当たりの売上高や利益は、昨年と比べて伸びていますでしょうかか?長時間労働による事件や、雇用形態の違いによる賃金格差など様々な問題が山積みされている中で「いかにしてより生産性の高い業務に時間を使うか?」または「社員一人ひとりの生産性をどの様に評価するのか?」ということへの検討が重要です。

図表2. 労働生産性の求め方

これは、日本生産性本部が定義している労働生産性の表す式です。生み出される付加価値を急激に上げる事は難しいため、この生産性を改善するためには「労働投入時間」をいかに少なくするか?ということが必要です。だからこそ「単純作業時間」を減らし、価値ある時間の使い方へシフトさせる必要があります。

システム化に取り残された、細かいルーチン業務を自動化するのが「RPA」

社内業務の中で、全社的に共通化されている業務のシステム化は、だいぶ進められてきています。しかしながら、個人毎に手作業で実施されるルーチン業務、例えば報告書作成、または業務フローが頻繁に変わるものや、イレギュラーな処理は、システム化されていないことがほとんどです。そして、これらの細かで一見地味な手作業こそが、生産性向上を阻害する要因となっているのです。

RPAは、既存システムの大きな改修や変更をすることなく自動化を可能とし、低コストで自動化を進める事ができます。そのため、小規模な業務でも投資対効果を見込むことができます。また、高度なプログラム作成知識を必要としないため、ユーザ自身が短時間で実装することが可能です。

RPA導入時に知っておきたいこと

生産性向上に対する取り組みの必要性と、そこにRPAが果たす役割について、これまでご紹介をしてきました。では、ここからは、実際の導入において、考慮すべき事項について、ご紹介をしたいと思います。

導入に際して一番大事な「対話」

まず、導入に際して必要なことは、ユーザ部門とIT部門でよく話し合うことです。

  • どの業務にRPAを導入することが可能か?
  • 期待される効果は?
  • 全体のコストは?
  • どのくらいの期間が必要?
  • 既存システムの修正は不要か?

など、考えなければならないことは、多岐にわたります。せっかく作ったのに使われない、かえって混乱を招いた…そんな事態にならないように、しっかりと話し合ってから、設計を行うことが重要です。

RPAが得意なこと

最近の企業で使われている多くのシステムでは、クラウド化されていたり、対象とするデータがSaaSの中にあったりすることが多くあります。また、そういったシステムを複数組み合わせて使っていることもあります。

このようなシステムを連携させて、データを入力・抽出する、そこから何か資料を作成する、といった作業は、RPAの得意とする分野です。規模が大きすぎると大規模な導入プロジェクトに発展してしまいますが、規模感は小さく一見地味に見える、システムをまたいだ作業は、日々の業務で意外と時間がかかるため、RPA導入により大きく作業量を改善することができます。

また、その際、従来手作業で実施していた作業をそのままロボットに置き換えるわけではなく、ビジネスプロセスそのものを見直すことも重要です。RPA導入は、無駄だった作業を見直すきっかけにもなるのです。

ツールの選択は?

適用業務が確定した後は、実際に自分でRPAを使ってデータを処理し導入効果を実際に体験してみましょう。その際、試用版を提供しているツールも多くありますので、ぜひ活用することをお勧めします。

ユーザ部門の立場の人は、どうしても導入効果に懐疑的であり抵抗感を抱くことが多い現状があります。こうした意見を払拭するためにも、実際のデータを使用した検証(PoC)を行い、その結果をもって、そのツールが対象業務に適しているか、全社導入が可能かどうかを検証することが大切です。

デスクトップ型RPAとサーバ型RPA

RPAには、大きく分けて、ローカルPCの中だけで実行する「デスクトップ型」、サーバから一括管理をする「サーバ型」があります。導入する規模感が異なり、全体のコストや管理手法が大きく変わります。従ってRPAの導入範囲と運用ルールおよび体制を明確化した上で、導入するツールを選択する必要があります。

 デスクトップ型サーバ型
特徴・各PC一台ごとにロボットをインストールして、デスクトップ内のアプリケーションを自動化することができる。
・PC作業者ごとのデスクトップ内の作業を自動化することができる
・部分的な投資効果が得られる
・限定的な業務に適応できる
・RPA管理サーバ上に複数のロボットを作成し、集中管理することができる
・全社的に導入することができる
・システム間の連携が可能
・高い投資効果が得られる
メリット・サーバ型に比べ初期投資が低い
・短期間で導入ができる
・部門や個人レベルで導入が可能
・大量データの取り扱い
・高可用性・冗長性が保たれる
・業務プロセスに連携した自動化が可能
・クラウド及び仮想化技術に対応している
デメリット・セキュリティ強度については利用しているPCの管理レベルに依存する
・大量データ処理には向かない
・ロボットの性能が作成した個人の能力に依存する可能性がある
・デスクトップ型に比べ初期投資額が高い
・高セキュリティ・大規模展開を見据えたシステム構成が要求される

RPA運用時の注意点

さて、ここまでRPA導入時に考慮しなければならない点についてご紹介しました。その他にも検討すべきことは多々あります。ここからは、注意点としていくつかご紹介をしたいと思います。

RPAの管理・実行・修正権限の検討

RPAの利点は、プログラムスキルを必要とせずに、ユーザ自身でロボットが作成しすぐに利用できるという点です。しかしながら、ユーザ部門が勝手にロボットを作成し制御不能なロボット(野良ロボット)が多数できてしまうといったことも考えられます。それにより、内部統制が効かない…なんて事態も招きかねないのです。そのためには「ロボットを作成する権限を誰が持つのか?」「誰が許可するのか?」を決めておくことが非常に重要です。

また、「作成されたロボットの稼働監視は誰がするのか?」「それをどんなツールで行うのか?」を検討する必要もあります。自由度が高い分、基幹システムの運用ルールよりも、より踏み込んだ運用ルールを決めておくことが求められます。

データの整合性への対応

また、情報管理の視点から、また監査評価の対策のためにも、「ロボットが入力したデータが本当に正しい値であるか?」を証明する必要もあります。

このためには、ロボットの動作ログが必要であり、またそのログ自体が適切な状態で保存されているかを管理しておく必要があります。

ロボットも気付かない障害が発生したら?

RPAは、Webブラウザ上の動作も自動化できる利点があり、多くのクラウドサービス(SaaS)と連携するパターンも多いでしょう。しかし、クラウドサービスは、その性質上、画面上のメニューの追加や、データ項目の変更などはユーザに断りなく行われることも多々あります。そんな場合、RPAは正しくデータ処理ができなくなるという障害が発生する可能性があります。

また、誰も障害が発生したことに気が付かない状態がしばらく続き、月次の集計結果を人間が見た時に、値の異変に気付くということも起こりうるのです。

したがって、自動化プログラムを過信せず、従来のシステム基盤と同様にトラブルが起こることを想定した運用ルール、またはリカバリープランを含めておくことも重要です。

最後に

RPAは、これまでの長時間労働から脱却し、人間ではないとできない創造的、かつ高付加価値業務へシフトさせ、個人の生産性を高める「人間のアシスタント」となりうる存在です。

導入においては、通常のシステム導入時の注意点に加え、「簡単に作れるRPA」だからこその注意点もあることをご紹介してきました。

  • RPAが得意なデータ処理プロセスを理解する
  • 適用業務範囲をよく検討する
  • PoCを経てスモールスタートで導入を進める
  • 運用方法と併せて、導入するツールの選択する
  • 運用ルールを事前に決めておく
  • 権限を明確にしておく
  • リカバリープランを検討しておく

ぜひこれらのことを考慮し、自社の助けとなるようなRPAの導入をしてみてはいかがでしょうか?

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