化学分析機器を学ぼう(2) クロマトグラフの使用場面と測定方法

化学分析機器を学ぼう(2) クロマトグラフの使用場面と測定方法

2018.04.26

前回の「化学分析機器を学ぼう(1) クロマトグラフィーとクロマトグラフ」の続編として、実際にクロマトグラフはどんな場面で何ができるのか、またどのようにサンプルからターゲットの成分の濃度を判断できるのか、ご紹介したいと思います。

クロマトグラフが使われる場面

クロマトグラフを使用する目的は、企業・研究所・学校によってさまざまですが、大きく分けると「研究/開発用」「品質管理用」「検査/測定用」の3つに分類することができます。

研究/開発用

まず、研究/開発用で見てみましょう。例えば、ある研究所が新しい素材を開発する時には、基本的には何か既存の素材を使用し、そこから応用して開発を行うことが多いです。

この既存の素材を、どんな成分で構成されているのか調べる際、文献や資料から収集したり、実際に測定し分析します。そこで得られた情報から応用した素材を開発したり、全く違うアプローチから新しい素材を開発していきます。

この中で、構造情報や、含まれている化合物を調べるときの分析方法の1つに、クロマトグラフがあります。化合物は、例えばある塩素系や有機リン系といった特性を持った化合物が含まれているものかを調べることができます。また、クロマトグラフの分析だけでは判断できない場合は、複数の分析装置を使用して調べます。

品質管理用

品質管理用の用途としては、製造された製品が、品質基準をクリアしているかを測定する際に使用します。

あらかじめ正常な製品を「標準サンプル」として測定し、対象となる成分の品質基準となる項目(濃度など)と基準値を決めます。その基準値に対し、許容範囲を設け、品質検査の基準値にし、その範囲に対象サンプルの値が検出されるかを調べます。

また製造工程の中で不純物が混入していないことを確認することで、製品の安全性を担保する際にも使用されます。

検査/測定用

検査/測定用の用途は、多岐にわたります。民間の検査会社、官公庁の検査機関や地方公共団体が運営する水道企業団、公益財団法人などが法令や各機関のルールで定められている基準をクリアしているかを検査/測定します。

身近な例としては、オリンピックでのドーピング検査があります。ドーピング検査は、選手や競走馬の尿、血液、髪の毛などを採取し禁止薬物が検出されるか検査していきます。

他にも、麻薬法に関する検査であれば警察庁、警視庁の科学捜査研究所や税関の検査機関、薬機法に関する検査であれば、製薬・食品・化学といった民間企業でも、この検査方法が実施されています。

クロマトグラフはどのように使い分けるか

ガスクロマトグラフと高速液体クロマトグラフの使い分け

クロマトグラフの代表例として、ガスクロマトグラフ(以下、GC)と、高速液体クロマトグラフ(以下、HPLC)があります。どのように使い分けるかは、分析対象の物質と、移動相の物質の違いによります。

分析対象の物質が揮発する(ある温度下で液体から気体になる)物質か、溶媒に溶解する(他の液体に溶け込む)物質かどうかで使用する機器が分かれます。

GCは移動相が不活性なガスを使用し、HPLCは有機溶媒などの液体を使用するので、移動相で押し出せる物質が対象となります。

定性と同定

ここからは、GCを例に挙げて紹介します。GCの検出器では、「定性」(未知の成分を調べて特定すること)はできません。GCのオプションで接続するMSD(質量検出器)や質量分析計であれば定性分析が可能ですが、GC単体で分析する時は、「同定」(分析対象物に、予め分かっている成分と同じものが含まれていることを特定する)までになります。

同定を行うためには、必ず事前に対象となる既知サンプルを測定しておきます。そのサンプルのピークと同じリテンションタイム*に分析対象物のピークが検出されたら、同じ成分だと断定できます。同じ環境下の装置であれば再現性良く検出できるので、その理論で成り立っています。

*リテンションタイム
分析を開始し、物質が検出されるまでの保持期間を指す。物質により固有の時間を持っているため、サンプル内の物質が順番に現れることで、複数の物質の測定を同時に行うことができる。

複数の機器を使用し、大量のサンプルを測定する場合

複数の機器で大量のサンプルを測定するような場合は、あらかじめ1台の標準機(A)で既知サンプルを測定しておき、装置条件や成分のリテンションタイム、検出器の種類をデータ化し、他の装置(B)の条件を合わせるよう、調整を行います。そして装置(B)で同じ既知サンプルを測定することで、同じパターンのピークのリテンションタイムが得られます。

複数の機器を使用し測定する際、機器の環境(温度、圧力、カラムの長さ等)によって、標準機(A)のリテンションタイムとは誤差が出ることがあります。そのため、実際の検査対象サンプルを測定する前に、その誤差を補正する必要があります。

装置(B)のカラムにかける圧力設定を、多段階に分けて測定することで、カラムにかかる圧力と既知サンプルのリテンションタイムの相関関係が導けます。これを利用し装置(B)のカラムにかける圧力を調整し、標準機(A)とほぼ同じリテンションタイムにピークを合わせることができます。

また、質量検出器(MSD)のリテンションタイムと一致させることができれば、定性済み成分のリテンションタイムと同じところに検出されたピークは同じ成分といえます。各社で製品名が異なりますが、リテンションタイムを調整する機能があるので、この機能を利用して同定の精度を上げて測定させます。

今日はここまで

いかがでしたでしょうか。定量すると一言でいっても、「定性」と「同定」の2つのアプローチがあることがわかりました。

また、異なる装置で定量を行う際には、装置間の条件を揃える必要があることもご紹介しました。このように、条件を揃え、注入量や温度、カラムの圧力、検出器の感度が一定であれば、濃度差とピーク面積値が比例関係にあるため、「検量線」というグラフを作成すると、原点付近から相関関係が取れた直線や二次曲線が描くことができ、この検量線を利用して、未知濃度のサンプルを測定する事で定量が可能となります。

この部分は、細かくなるため、また別の機会にご紹介したいと思います。

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