人材育成の最大のイベント ATD2018 参加体験記② モチベーションとAIの活用

人材育成の最大のイベント ATD2018 参加体験記② モチベーションとAIの活用

ATD2018 International Conference & Expoの参加レポートです!今年で75周年を迎える世界中の人材育成の専門家にとって最大のイベントですあり、人財育成に関する世界動向を体感するために参加してきました!400を超えるセッションから選りすぐって参加したセッションで得られた情報をお届けします!

著者:高坂 直子 (日本サード・パーティ株式会社)

参加の決め手は…

そもそもなぜ私が今回、ATD2018インターナショナルカンファレンス&エキスポ(ATD2018-ICE)に参加することになったのか…。仕事柄、人財育成について考える毎日を過ごしている私ですが、『人財育成』というのは幅が広くて情報収集するだけでもどこから始めようか、と頭を抱えてしまうほど大きなテーマです。

どこかで効率よく情報収集できる場所はないのだろうか、と考えていたところ「ATD2018-ICEというものがあります!」と、チーム内で一番人財育成ビジネスに携わった経験が深い方から教えていただいたのです。ATD(Association for Talent Development)は世界中の組織に属する人々の知識とスキルを開発する人を支援する専門的な会員組織であり、ATD2018-ICEは世界中の人材育成の専門家にとって最大のイベントだというのです。

これまでは、人財育成の中でもITエンジニアの技術習得といったとてもニッチな分野の育成課題や教育事情にフォーカスしていた私にとって、視野を広げてもっと大きなくくりで人財育成を考える機会になると直感しました。同時に海外ではどんな教育プログラムや教育手法が注目されているのだろう、スキルアセスメントはどのように使われているのだろう…と、いった情報がきっと得られるに違いないと感じた私は、参加を心に決めたのでした。

いざ、イベント参加!

イベントサマリー

ATD2018-ICEのイベントサマリーは、先にリリースされているイベントレポートで紹介されていますのでこちらをご覧ください。

人材育成の最大のイベント ATD2018 参加体験記① 多様な学びと「マイクロラーニング」

参加セッション選びに苦戦

とにかくセッション数が多いので、出発前からどのセッションに参加するか選ぶのが大変でした。イベントの参加登録をWebから済ませると、IDが発行され、ログインすると「My Schedule Planner」で参加セッションのスケジュールを作成できますが、ツールを使って全セッションを表示すると466もありました!

気になるキーワードを入力してヒットしたものにチェックを入れていくのですが、同じ時間に2-4のセッションが重なってしまうことばかり…。もう一人の参加者と調整したり、プレゼン資料が提供されるセッションや録画されるセッションの優先度を下げたりすることでなんとか絞り込みました。

セッション紹介① モチベーションに関するセッション

社員のリテンションを上げる-優秀な社員を確保する-というのはどこの組織においても重要な課題の1つではないかと思います。リテンションを上げるためにどんな手が打てるだろうか、もちろん福利厚生や給与など働く条件も大事な要素だと思いますが、メンバーが活き活きと働けるようにマネジメントを育成する、個人の仕事に対する考え方を醸成するといったタイプの取り組みはないのだろうか?

そこで、Engagement & Motivationというキーワードでヒットした3つのセッションに参加しました。

Wired to Become: The Neuroscience of Purpose(M106)

本セッションでは、2000年代生まれの71%が「働く意味」をキャリアの成功の決めるトップ3要素の一つと考えているというデータからスタートし、人類は目的を持つことで急速に発展してきたことや脳科学的な視点を用いて目的の重要性を上げていました。

目的の3要素は「だれが」「なぜ」「どうやって」であるとして、目的を強化する方法を参加者同士のディスカッションを交えながら紹介していました。

Ouch, That Hurt! The Neurobiology of Feedback(TU407)

日本でも注目が高まる「フィードバック」について、様々な研究結果を交えながら対人フィードバックについて紹介していました。

対人ストレスはその他のストレスよりも3倍ストレスホルモンを分泌させ、ストレス状態が落ち着くまでの時間も50%長くかかるとのデータ紹介から始まり、男女のストレス耐性の差異、対人関係の痛みは身体的な痛みを感じるのと同じ脳の部位が活性化される(つまり身体的な痛みを負うのと同じ)といった研究データを次々に紹介していくところは説得力を感じた。

後半はこれらのストレスについて踏まえた上で、マネージャーがメンバにフィードバックするためのテクニックとして、使わない方がよい言葉や態度の取り方などを紹介していました。ポジティブで役立つフィードバックを提供すること、モチベーションをあげるにはフィードバックを得て、これからどうするのかを導き出し、その方法を考えることが必要とのことでした。

New Advances in Motivation Science Require 3 New Leadership Competencies(W112)

発表者自身の研究論文をベースに、モチベーションはスキルであること、質の良いモチベーションが職場でのパフォーマンスやエンゲージメントを高めることが紹介されました。心理的ニーズが質の良いモチベーションを創り出とのことで3つの要素があげられました。

  • Autonomy(自律性):選択肢を与えることで自分にコントロールできることだと認識すること
  • Relatedness(関係性):コネクションを感じられること、組織と個人の一体感を感じるために意味や目的を関連づけること
  • Competence(能力):スキルがあると感じられること、成長を感じられること

メンバに対してモチベーションを与えることはできないが、上記のニーズを満たせる環境を提供することでモチベーション向上をサポートすることができるとのことでした。

3つのセッションに参加してみて

これら3つのセッションに参加してみて、リテンションをあげるためには社員が自分の仕事/役割に対して質の良いモチベーションを維持することが大事だと感じました。そして、モチベーションの向上には行動に対する意味付けや目的意識を持つことが必要であることが共通事項であると感じました。

個人のモチベーションにフォーカスした様々な研究がおこなわれているのは、人財の流動性が高い米国だからこそと感じました。また、日本でも転職市場は拡大傾向にありますので、個人のモチベーションと向き合う機会をどう充実させていくか課題として向き合っていく必要があると感じました。

セッション紹介② AIの活用に関するセッション

教育分野にかかわらず様々な領域で注目が集まっているAIですが、ATD2018-ICEではどのように取り上げられているのか、というのはとても気になっていました。

Adaptive Technology: Artificial Intelligence Comes to Learning(SU42EXD)

私が参加した「Adaptive Technology: Artificial Intelligence Comes to Learning(SU42EXD)」では、eラーニングプラットフォームでAIが活用されるサービスを紹介していました。

従来の集合研修では、同じ教室にいる全生徒が講師から同じ情報を提供される形をとるが、生徒によって理解度は異なり、学びの質もことなるため効率よく個人が学ぶには限界があるとのこと。近年はアダプティブラーニングという形で、受講者が必要な学習コンテンツを選択的に利用するものが出てきてはいるものの、これをAIの活用で自動化し、パーソナライズラーニングと称して受講者ごとに適切なラーニングパスで学習ができるというものが紹介されました。

ゴールは同じだが、そこに至る過程は受講者ごとに異なる。例えば、従来5時間の集合研修で中途採用者トレーニングをしていたが、このプラットフォームを活用したトレーニングに置き換えることで、平均3.4時間で受講を完了したという話でした。人財育成の中でもトレーニング受講の費用対効果を示すのは、難しいことであると感じていた私にとって非常にわかりやすい事例でとても納得感がありました。他にも、コンテンツを受講した後の理解度データを基に分析していくことでコンテンツの良し悪しまで判断してくれるのでコンテンツ向上にもつながるとのこと。

プラットフォームの技術革新が進んでいることを目の当たりにしたわけですが、コンテンツ開発自体はまだまだ人間の仕事。プラットフォームの仕様に合わせたコンテンツ開発を行える人財をどうやって育成していくのか、次の課題はそこにあるだろうと感じました。

参加者とのコミュニケーションを通して

参加したセッションの中では、近くに座った参加者同士が提示されたテーマについて話し合ったり、チームでディスカッションして結果を発表しあったりする場面がありました。話をしていて感じたのは、個人が自身の業務内容や業務範囲を明確に持っているし、個人の能力をどう伸ばしていくかというところに強い関心を持っているということです。

そして、特に人事関連の担当者は自分たちの役割は将来的にAI等で自動化されていくだろうという危機感を持っていました。LMSの管理やデータ活用といった雑務は自動化されていくので、「代わりに自分たちに何ができるのか?」を模索する声が聞こえたのは印象的でした。

まとめ

初めてのATDイベント参加でしたが、改めて人財育成について考える機会となりました。人財育成の歴史は長く、全く聞いたことのない技術や知識が次々と生み出されるIT業界とは異なる世界でしたが、積み重ねてきた実績や経験をもとにした研究開発が行われていることがわかりました。人が学ぶ過程を科学的に裏付けて現場で役立つソリューションにしてしまう、研究者と教育機関が一体となって活動している様子など、新鮮でした。

特にAIを活用した学習プラットフォームに関しては参加したセッションで紹介されたもの以外にも出てきているので、これらのプラットフォームに適用したコンテンツ開発は将来的に必要なスキルになるだろうと感じました。また、モチベーションに関する情報も得られたので発表者出版の書籍を入手して理解を深め、これらは、社内でも活用していきたいです。

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