NAO 最新モデルと旧モデルを開発者が比較してみた!

NAO 最新モデルと旧モデルを開発者が比較してみた!

ソフトバンクロボティクス社製のヒューマロイドロボットNAOは、世界中の教育・研究機関に導入されている代表的なロボットで、総販売台数は 2万体以上、NAOを使用した研究論文は1万を超えています。NAOは、ロボットと人の未来の可能性をつなぐ素晴らしいヒューマノイドロボットであり、多くの研修者に愛されています。

この記事では、前半でNAO v5(2014年発売)と最新版のNAO v6のスペック面の比較を参考資料としてご紹介し、後半では東京大学大学院 情報理工学系研究科 藤井 綺香さんにご協力いただき、研究者の目線からNAO v5とNAO v6 を比較していきます。

ハードウェア・スペックの比較

スペックの違い

NAO v5からNAO v6へのバージョンアップにおいて一番変化しているポイントは、CPU・メモリ・ストレージのスペックの大幅な向上です。

CPUはIntel Atom Z530 1.6 GHzからE3845 Quad Core 1.9 GHzへ向上し、メモリは1GBから4GBと4倍になり、ストレージは2GBのFlush Memory+8GB Micro SDHCから一気に32GB SSDへと容量が増えました。

スペックの向上によるメリットとしては、後述するように、起動時間の短縮や連続起動の際の動作の安定性があげられます。そして、ストレージ容量が増えたことで、より多くのロボットアプリのダウンロードや、Choregraphe, ROS等で容量の大きいアプリを開発することも可能になりました。

一方、NAO v6へバージョンアップしたことにより、外部からロボットに接続するパソコンの必要最低メモリ数が8GBから16GBに増加しました。

ボディカラーの違い

NAO v5は赤と青の2色がありましたが、NAO v6は今のところグレー1色のみの展開になっています。NAO v4以前は水色やオレンジ、黄色もありカラーバリエーションが豊富でしたが、ボディカラーによってNAOに装着させる衣服や周囲の背景などを調節する工夫が必要でした。

その点、NAO v6のグレー色はカラフルな色合いではないものの、NAOに装着させる衣装の汎用性はNAO v5よりも高く、周囲の環境色に気を配らなくてもよくなりました。

初期化方法の簡素化

NAO v5では初期化用のプログラムを組んでUSBをNAO本体へ差し込み、ターミナルにて操作をしてから初期化する必要があり、ロボットのオペレーションが煩雑で難易度が高いものでした。

それに対して、NAO v6ではChoregraphe内のタブから初期化を選ぶだけで簡単に初期化できるようになっており、大きく進歩しています。

NAO v6での開発について

ここからは、藤井さんによる、研究者目線でのNAO v5とNAO v6の比較です。

NAOの主な開発手段として、Choregrapheというビジュアルプログラミングツールを用いる方法と、ROS(Robot Operating System)というオープンソースソフトウェアを用いる方法の2種類がありますが、ここではROSを用いた方法について説明していきます。

環境構築

Ubuntu16.04とROS kineticを使用します。

メインパッケージのインストール方法は下記をご参照ください。

・ROS kinetic
http://wiki.ros.org/kinetic/Installation/Ubuntu

・NAO用ROSパッケージ
https://github.com/jsk-ros-pkg/jsk_robot/tree/master/jsk_naoqi_robot

この他にも

sudo apt-get install python-catkin-tools
sudo apt-get install ros-kinetic-jsk-tools

など、適宜必要なものをインストールします。

ROSでNAOを動かす

上記の環境では、外部PCとNAOを同じネットワークに繋ぎ、外部PCをROS masterとしてROSのノードを立ち上げることを前提としています。

つまり、NAOから送られたカメラ画像やセンサ情報などをもとに、外部PCでプログラムを走らせて、出力された動作指令をNAOに送る、というかたちをとっているため、NAOの内蔵OSではそれほど複雑な処理は行っていません。

NAO v5からNAO v6への移行について

胸のボタンで電源をオンオフさせたり、IPアドレスを喋らせたりできるなど、基本的なUIはNAO v5もNAO v6も全く同じです。また、モータやセンサの配置に大きな変更がないため、現状では特に問題なくNAO v5以前から使用しているプログラムを走らせることができています。

NAO v6で性能がよくなっていること

起動時間の速さ

起動時間は、NAO v6の方が約2.5倍速くなりました。NAO v5は新品の場合でも起動におよそ120-150秒かかり、使用年数が増えるとさらに起動時間が長くなる傾向があります。

一方で、NAO v6は60-70秒ほどで起動させることができます。そのため、イベントなど現場での迅速なセットアップが求められる場面や、トラブルにより再起動したいときなど、とても使い勝手が良くなっています。

連続稼働時間

NAO v5では長時間継続して使用しているとコンピュータやモータの温度が70-80度程度にまで上がってしまうことがあるため、時々サーボや電源を切って休ませながら使う必要がありました。

これに対し、NAO v6では半日程度実験し続けてもコンピュータもモータも50度を超えることはほぼなく、安心してデバッグも行えるようになっています。実際に、丸2日間にわたり対人実験を行った際にも、熱暴走などが発生することはありませんでした。

モータの静音性

経年劣化による影響もありますが、NAO v5以前のものだと可動域の限界付近まで到達したときに関節がきしんだり動きが滑らかでなくなったりする問題がありました。

初めてロボットと触れ合う人も含めた多くの人に対して実験を行う際には、モータがきしむ音でロボットに恐怖を感じてしまう人もいるため、NAO v6のように静かに滑らかに動くということは大変重要なポイントです。

NAO v6でもあまり性能が変わらないこと

WiFi

上述の通り、本記事で紹介している環境ではプログラムによる処理は全て外部パソコンで行っています。そのため、カメラやセンサ、関節の状態などの情報をrostopicとしてNAOから外部パソコンに送る必要があります。

しかし、カメラ画像をWiFi経由で送ろうとすると1-2秒の遅延があり、FPSも1程度まで落ちてしまいました。有線を使用するとほぼリアルタイムにカメラ画像の受信が可能なので、現状だと有線接続が前提となりそうです。ただ、NAOの内蔵CPUはパワーアップしているため、現在外部パソコンで行っている処理の一部を内蔵CPUで行うようにすることができれば無線接続も可能かもしれません。

モータの制御性

NAO v5以前から、まったく同じ腕の関節角度の指令を出しても、腕を上げた状態からその関節角度に到達するときと、腕を降ろした状態から到達するときとで、微妙にエンドエフェクタの位置がずれるという問題に悩まされていましたが、NAO v6でもその点に関しては改善されていないようです。

まとめ

NAO v5からNAO v6に移行する際、何かしらうまくいかないポイントがあるのではないかと想像していましたが、実際はそのようなことはなく、すぐにNAO v6を使い始めることができました。そして、NAO v5とNAO v6は同じプログラムで動かすことができるため、万一NAO v6が故障した際にはNAO v5を代替機として使用することができるという安心感もあります。NAO v6にもまだ改善点があるというのは事実ですが、NAO v5と比較して機能が落ちたと感じる部分は全くなく、長時間の対人実験においても安心して使用することができました。

 


以上、NAO v5とNAO v6の比較についてご紹介させていただきました。

JTPでは、大学や研究機関へのNAO本体の販売やレンタルのほか、導入・保守運用の支援、さらには医療や介護、教育といった分野に特化したソリューションなど、様々なサービスを提供しています。

サービス詳細は下記をご覧ください。
https://www.jtp.co.jp/services/robotics/nao/

記事は、予告なく変更または削除される場合があります。
記載された情報は、執筆・公開された時点のものであり、予告なく変更されている場合があります。
また、社名、製品名、サービス名などは、各社の商標または登録商標の場合があります。